願い

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 数日楠の傍でしっかり休んでから、五十鈴は再び里に下りるようになった。里の中で様々な人に出会い、夜になって帰ってくるとその日一日の出来事を白弥に話して聞かせる。  中でも頻繁に登場するのはやはり吾平の名だ。浅からぬ縁で出会った者同士、その後も交流が続いているようだった。吾平の話をする時の五十鈴はいつもとりわけ楽しそうだ。  きっと五十鈴は自分より近いところで人々を見守ることに向いている、と話を聞くにつけ白弥は思う。畑や家畜の世話を手伝ったり、最近では家に招かれることも度々だ。  近頃見掛けるようになった少女が実は人間ではないなどと、里の誰も思わないだろうと考えると、白弥の顔には苦笑いが浮かんだ。
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