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「……ねえ白弥。夢とは何?」
その日、帰ってくるなり五十鈴がそう問い掛けてきた。
「……ひとつは人が睡眠中に見る幻覚体験。もうひとつには『将来そうなりたい』と心に思い描く未来、だ」
答えながら、白弥は五十鈴の常ならざる様子――いつもより張りのない声、どこか地に足が着いていないような、それこそ夢見心地な雰囲気に気付いた。
「心に思い描く……」と噛み締めるように呟く五十鈴を、黙って見つめる。
「……白弥」
やがて口を開いた五十鈴の声は、心を決めたように堅い響きをしていた。
白弥を真正面に見つめ、告げる。一言一言を自分に確認するように。
「わたし、吾平さんの元へ行きます」
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