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古来より里の人々は、まるで山の天辺から自分達を見守ってくれているような立派な楠に畏敬の念を抱き、これを奉った。そして多くの祈りを、時に願いを捧げて来た。
その『人々の想い』が徐々に楠に蓄積され、そうして生まれたのが白弥だった。
彼は生まれながらに己が何者であるかを知っていて、以来動けない楠の代わりとばかりに人々の願いを聞き分け、また山を護ってきた。
だから彼は自分の後ろ、やや低い位置の枝に腰掛けて漆黒の瞳でこちらを見ている、少女と呼んで差し支えないくらいの外見の彼女が人ではないとすぐにわかった。
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