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「わたしは五十鈴というの。目が覚めたらここに座っていたのだけど……どうしてなのかわからないの。わかるのは五十鈴という名前くらいで。どうしてなのか、白弥はわかる?」
「……」
暫しの沈黙。その間、白弥の頭の中を思考が目まぐるしく錯綜する。
「目が覚めたらどうしてかここに座っていた」ということ、またそもそも声を掛けられるまで白弥が彼女の存在に気付かずにいたということからしても、彼女もまた楠に蓄め込まれた力に因って生まれた可能性が高い。気付かなかったのは彼女の気配が楠と酷似していたからだ。
全く予期していなかった、突然の新たな『人ならざる者』の出現。
更に言動から察するに、彼女は自分の身に起きたことを全く理解していない。
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