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日課になっている山の見回りの行く先々に、白弥は五十鈴を伴うようになった。知識の有無については連れ歩いて確かめるほうがいいと判断したからだ。
名前しかわからないと言っていた五十鈴だったが、山で見掛ける動植物に関しては多少知っているようだった。季節によって姿を見せる鳥など、彼女にとって未知のものに遭遇した時にはまるで小さな子どものように目を輝かせ、好奇心全開で質問してくる。
「ねぇ白弥、あれは何ていう鳥?」
「黒鶇。この季節になると見掛けるようになる渡り鳥だ」
「とても綺麗な声で鳴くのね」
「あれは雄だな。番となる雌をああして探している」
「まあ……」
両の頬に手を添えて、白弥からすれば大袈裟に嬉しそうに呟く。それから鳥に向かって、
「頑張って早くいい奥さんを見つけてね」
と声を掛けた。
彼女が手を振ると、姿が見えていない筈なのに鳥はちらとこちらを見遣ってひと鳴きし、何処かへ飛んでいった。
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