願い

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 鳥が飛び立った後もにこにこと嬉しそうな五十鈴の横顔を、白弥は何だか不思議な気持ちで眺めていた。  五十鈴が現れてから、もうすぐ季節が一巡りしようとしている。  とにかく一人前になるまで面倒を見なくてはとあちこち連れ歩いたが、正直白弥は最初、彼女が苦手だった。  知識を取り込むのは早い。教えたことは絶対に忘れないし、知らないこともどんどん積極的に訊いてくる。  だが彼女のくるくる変わる表情や、人であれ動植物であれ、まるで自分の姿が相手に見えているような、声が届いているような振る舞いには違和感を覚えてしまうのだ。  彼は今までずっと、一人黙々と役目を果たしてきた。彼の周囲はいつも静かで、葉擦れの微かな音や小鳥の囀りが遠く聞こえるだけたった。彼自身、それが当たり前だと思っていた。  五十鈴の出現により、白弥の周りは一気に騒がしくなった。五十鈴はわからないことがあったらすぐに「あれは何?」「それは何故?」と訊いてくるし、そうでなくとも四六時中白弥の傍にいて、他愛もないことにもいちいち反応した。  はっきりとした嫌悪感はないけれど、自分一人で完結していた世界に突然異物が混じってきたような、欝陶しさにも似た違和感が頭の隅で小さなしこりを作っていた。  けれど時間の経過と共に、見方は少しずつ変わっていった。
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