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カーテンを引いた、薄暗い彼女の部屋。19時をまわって降りだした雨は窓を叩いて、外へ出るタイミングを逃した。
「……雨降ってるの?」
敢えて明かりを灯さない部屋で、彼女はただでさえ白い頬を青白く照らす。ちらりとこっちを向いたその瞳には、長方形の発光体が写り、不覚にも綺麗な色合いを魅せていた。
「風も強いみたいだね……」
彼女の隣で膝を抱えて、次々と色を変える瞳の色に魅入りながら、まだ帰りたくないなと声に出さずに想う。
もっと、隣にいたい。
もっと、見ていたい。
そっと、触れてみたい。
そっと、近づきたい。
きっと、抑えられない。
きっと、拒めない。
「……泊まってもいいよ」
素っ気ない彼女の言葉に、そのたった一言に、心が燃え上がる。膝を抱えていた手が無意識に、彼女へ延びてしまうのも仕方ないと、無理な理屈を構築する程に。
さらさらと流れる絹のような髪に指をさして、小さな耳の淵を指先で撫でた。
「……あっ」
ぴくりと震えた肩と短く小さな声に、燃え上がった心が震える。彼女の体温の高い場所へ指先をするりと入り込ませようと、体の重心を動かしていく。
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