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次の瞬間に、僕の手が触れていたのは床だった。
「あぁあっ、選択ミスしたじゃない!」
「えっ」
跳ね上がった彼女の体。青白かった彼女の頬は一瞬にして暖かな色を取り戻し、幻想的なまでに輝いていた瞳はくるりと色を変えた。
一方、突然の彼女の反応に引っ込めざるを得なかった僕の手は、反動によって体を反らした為に尻餅をついて、冷たいフローリングにくっついた。
「好感度MAXで、あと一息だったのに……っ」
「そんな……ゲームでしょ?」
彼女はスマホの画面を、僕にこれ見よがしに押し付ける。そこには不機嫌な顔をするイケメンの男が吹き出しに『俺だけを愛しているんじゃなかったのかよ』と、信頼を裏切られたと悲観する台詞を吐いていた。
現実の彼氏が隣にいながら、愛しの彼女はスマホで乙女ゲー、しかも密やかにハーレムを作っていく内容を淡々とこなしていたのだ。そして、僕の手が触れた事で台詞の選択を誤り、彼に幻滅されてしまった……と。
「ゲーム? そうよ、ゲームよ。でもね、たかがゲームじゃないのよ!」
そして僕は激怒されている。
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