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「分かりました。僕の予測とも見事な迄に一致を見せていますし、此れであれば僕も陸くんに助力が可能です。残念ながら永劫に等しい恋仲の継続は陸くんの努力次第とも言えますし、僕はあくまで溺れる者たる陸くんに一束程の藁を放るだけ。尚、藁何本で束とするか明言さえ出来ませんし、藁を投じるだけで後は全て陸くんの選択次第です。……そう言えば或る種陸くんは恋に溺れているとも言えますし、言いえて妙な喩えですね、此れ」
「何かおまじない知ってるの!?」
藁が来た。或いは藁を持った友達が来た、というところか。
此処で自ら助けに来るでもライフセーバーを連れて来るでもない辺り、矢智らしいが、そもそも矢智の言う通り此れは他人に如何にかして貰う問題ではない。
己の恋愛継続を完全に他人に頼りきるのであれば、其れはもう、終わっているか、殆ど終局間近である。そもそも矢智が藁を放る以外の干渉を申し出てくれば、オレは即座に棄却する。
もっとも矢智の性分を踏まえればそうした、所謂出過ぎた真似をしない事は明白である為、割かし気負わず相談が出来る面もあるが。
ともあれ、半ば食って掛かる勢いで喰い付いたオレに、矢智は笑って頷いた。
そして矢智の手が伸ばされる。何処か緩慢な動きで、何処か芝居めいていて。
日常生活に於いて矢智は、難しい言い回しを好んで用いるものの、動作については極めて単純というか至極普通であり、凝った動作や気障な仕草とは無縁の人物である。
そんな矢智にしては珍しく、思わせ振りな仕草及び表情で伸ばした矢智の手の先には。
其れ自体は有り触れた物。
今では態々専門機関を得る必要も無く、100均やコンビニでさえ容易に入手出来てしまう。
医療用眼帯が、先程とは異なる、何処か妙な風格さえ携えて、矢智の片目を、先程と変わらず覆っていた。
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