原案(あらすじ)

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原案(あらすじ)

目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。 (あれ?生きてる) 死ぬつもりだった。 イジメに耐えるのも疲れたんだ。 ちょうどいい高さのビルを見つけた僕は、階段を上り手すりから身を乗り出した―― と思ったら、強い衝撃と共に気を失ったのだった。 意識がはっきりしてくると、誰かが僕の顔を覗き込んでいることに気付いた。 「自殺未遂?止めちゃった」 オジサンはにやりと笑った。 飛び降りる直前、階段に突き飛ばされたらしい。 しばしの沈黙後。 「オレの代わりにさ、殺して欲しいヤツがいるんだ。 殺人犯になりたくないから、お前やってくんない? だって、どうせ死ぬんでしょ?」 それが僕とオジサンの出会いだった。 殺して欲しいヤツとはオジサンの元奥さん。 冗談なのか本気なのかよく分からない。 でもそれほど悪い人にも見えない。 死に損なった僕は、他にやることもないからオジサンについていった。 まずは元奥さんの居場所を探すところから始めた。 何かと勝手なことを頼んできて、僕が渋ると「だって、死ぬんでしょ」って言う。 確かに、死ぬと思えば何がどうなってもいいかもしれない。 そのうちにいろんな出会いがあり、僕はいろんな考えを知った。 本当に、自分が死ぬなら後はどうでもいいのか。 自殺しようとしていた時は考えたこともなかった。 オジサンの何気ない一言が心に残っている。 「死にたいってのは、生きたいってことじゃないのか?」 やがて僕は元奥さんを見つけた。 今までオジサンに従ってきたけど、やっぱり人は殺せないと確信した。 そしてオジサンは意外な行動に出た―― 全てが終わった後、僕はあの階段に来た。 「だって死ぬんでしょ」という決め台詞に「生きるよ」と僕が返したときのオジサンのにやりとした顔は、最初の出会いの時と同じだったな。 そんなことを思い出していた。 死にたかった少年と、殺したかった中年男が出会い、 それぞれ新しい道を歩き出すまでの話。
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