ドキッ

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ドキッ

 次の日、3年生になったとしき君と昨日1年生になったつよし君が、仲よく手をつないで登校する。 「行ってきまあす。」 「行ってらっしゃい。」  僕もついて行こうとすると、 「金太はだめ!」3人から同時に叱られる。  仕方がないから「行ってらっしゃい、ワン。」  ママさんが、 「金太も大きくなってきたから後で、いっしょにつよしを迎えに行こうか。」 「うれしい、ワン。」  お昼少し前に、リードをつけてもらいママさんとデート気分で散歩する。ママさんは、歩いているのにスピードが速く、僕は、走らなければついて行けない。  これは、散歩とは言えない。  待合場所に着くと他のママさんもたくさんいる。そこに僕と同じぐらいの大きさで、真っ白な毛がとても印象的な彼女が、真っ赤なリードの先にすまし顔で座っている。  「ドキッ。」可愛い。やっぱり外の世界を知らなくては。痛いだけではないんだ。  思う間もなく、つよし君が帰ってくる。  お迎えのワン、ワン。つよし君も手を振っている。  何か、とってもうれしいなあ。明日も連れてきてもらおう。  次の日、マラソン感覚で待合場所まで。今日も彼女が来ている。でも、こっちを見てくれない。お迎えの挨拶を昨日より大きな声でワン、ワン。ちらっとこっちを見てくれる。  ちょっと幸せ。明日も必ず迎えに来ます。  お迎え3日目。今日は、ママさんより一歩前に出て走る。 「金太、先に行ってはだめ!」  待合場所に着くと、彼女が座っている。名前は、誰かがマリちゃんと呼んでいた。僕も名前を呼んでみる。 「クーン。」マリちゃんも「クーン。」とっても幸せ。  突然、2人の時間を割くようにリードが引っ張られる。ママさんとつよし君がこちらをじっと見ている。恥ずかしい。先に帰ってくれてもいいんだけど。  帰り道、2人で話をしているのを聞いていると、明日からはお迎えがないらしい。自分で帰ってくるらしい。  そんなことは、初めて聞いた。心の準備ができていないよう。僕の幸せはどうなるの?  マリちゃーん。会いたいよーん。家に帰って、小さくなったかごに入り、唸りながらバスタオルを思い切り噛んでしまった。
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