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楽しい日々
僕は今、神前家の警備隊長として毎日充実した日々を過ごしている。先日、侵入してきたのは猫だそうだ。
ママさんの話では、よその家にも出没しているそうだ。今度来たら、やっつけてやるぞ。
毎日、警備をしていると、決まった時間に決まった人たちが家にやってくる。
朝一番早くやってくるのは、新聞を入れてくれるおじさんだ。バイクの音でわかる。
いつも、おはようと挨拶してくれる。僕も小さい声で「ワン」と挨拶を返す。
時には、手を伸ばして格子の隙間から頭をなでてくれる。雨が降っても大体同じ頃に来てくれる。
しばらくして、パパさん、アユ、としき君、つよし君が家を出て行く。
いってらっしゃい。「ワン。」
ママさんは、お昼前に買い物に出て行く。僕も、時々ついて行く。夕方、赤いバイクでやってくる人は、手紙をポストに入れてくれる。ごくろうさま。
ママさんは、1日2回ご飯をくれる。時々は、「キンちゃん、おやつあげる。」と言って、少し硬い目のお菓子をくれる。あまり甘くないが、歯にいいらしい。少し甘えると、おなかもなでてくれる。
6月になり、僕の体は、一回り大きくなった。筋肉もつき、がっちりしてきた。体に力がみなぎる。誰にも負けない自信が溢れてくる。
その夜、いつもと同じように小屋に入り、外をのぞいていると、空が光る。遠くでゴロゴロ、音がしている。しばらくすると、雨がドバーッと降ってくる。慌てて、小屋の奥に入る。風が吹き、雨が小屋の中まで吹き付ける。
ピカッと光るとすぐに、バリバリバリとおなかに響く音がする。これはいけない。尻尾がだんだん下がってくる。嫌な予感。怖い。慌てて小屋を出て、玄関前で吠える。パパさんが出てきて、玄関の中に入れてくれた。今夜は、特別に玄関の中で過ごすことに。
ガラスの外がピカピカ光って朝まで眠れそうにない。でも、心の中は、警備隊長です。
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