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暖かいストーブの前でもう少し経てば、ミルクを飲んで元気が出るかも知れないと祈りながら、校長先生や教頭先生、事務の先生に後を任せて教室へ行く。
さあ、1日の始まりだ。
「クーン、クーン。」
なんか、暖かくなってきた。いい匂いがする。何だ、何だこの匂いは?ペロペロ、ペロペロ。美味しい。おなかも暖かくなってきた。もう少し欲しいな。周りも少し見えるようになってきた。ここは、どこだ?確か、僕には、兄弟がいたんだ。でも、僕だけ箱に入れられてここに連れてこられたんだ。
ずっと、寒くてもう死ぬかも知れないと思ってた。助かった。よかった。
給食の後、細かくちぎったパンを握り、職員室に戻り箱をのぞくとぐっすり眠っている。
でも、震えていない。口の周りは、ミルクで白くなっている。
事務の先生に聞くと、皿をずっとなめていたので、もう少し温めたミルクを継ぎ足すと、すっかり飲み干して寝てしまったそうだ。
手紙には、
〔ごめんなさい。どうしてもこの子の面倒を見てくれる人が見つかりませんでした。お願いします。だれか世話してください。〕
ずいぶん身勝手な話だが、いろんな訳があるんだろう。
教室で子どもたちに朝の様子を聞くと、ずいぶん心配しているので元気になったことを話して、誰か世話をしてくれる人はいないか聞いてみたが、誰からも即答はなかった。
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