初めまして

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初めまして

「キューン、キューン。」  ガクガク、ブルブル。寒いよう、暗いよう。おなかが空いたよう。  このままじゃ、死んじゃうよ。  お願い、誰か助けてぇ!  3学期が始まり、冷たい風が吹く朝、小学校には子どもたちの歓声が戻ってきた。正門の片隅で、数人の子どもたちが輪になって、ワイワイ、ガヤガヤ。  挨拶をしながら、子どもたちの後ろからのぞき込むと、みんな振り返り、 「あっ、神前先生、おはようございます。大変、大変です。箱の中で子犬が震えてます。早く暖かいところへ連れて行かなくっちゃ。職員室のストーブの前へお願いします。手紙も入ってます。」 「かわいいっ。まだ、目が開いてない。きっと生まれて間がないよ。でも、ぐったりしてる。先生、大丈夫かな?」 「先生、早く、早く!」  子どもたちにせかされて、とりあえず箱ごと職員室へ運ぶ。子どもたちも後ろからついてくる。ブルブル震えているのが、箱を通して伝わってくる。目は閉じているが、小さい声で「キューン」と鳴いている。心がざわつき、不安がよぎる。  でも、子どもたちには、大丈夫だからと職員室から出てもらう。  冷蔵庫にあるミルクをレンジでチンして、お皿に入れる。     
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