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化粧品会社が毎月発行する、会員用の小冊子に、相田さんの既存の作品が使われることになった。私は、時々嶋崎さんのアシスタントとしてかばん持ちをしたり、美術館の係員のバイトを紹介してもらったり、結構忙しい。 「女性には女性が対応した方が良いこともままあるから、助かりますよ」 嶋崎さんはそう言ってくれた。人使いは少々荒いけれど。 今日も、彼が事務所に迎えに来てくれた。 「言っとくけど、レイに手ぇ出したら、嶋崎さんでも殺すよ?」 私にべったりとくっついて、相田さんは威嚇する。 「誰がそんな恐ろしいこと。本気で言ってるだろうお前」 嶋崎さんは、眼鏡の奥の眼を(すが)めた。 「お客様がいらしてる時くらい、離れてください」 私は、相田さんを両手で押しやった。相田さんは、イヤ。と言ってなおもまとわりつく。 「いいの。僕らは、ただれた肉欲カップルだから。嶋崎さんもそれは知ってるし」 「いや、目の毒だから、少し遠慮はしてほしいな」 最近知ったことだが、嶋崎さんは独身らしい。     
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