【番外編】LIFT

6/10
前へ
/122ページ
次へ
俺は、張り切っているジッパーを、苦労して下げ、硬直した自分自身をつかみ出して女にのしかかり、開いた脚の間に押し当てる。女の肩がビクリと強張る。 「あいつは、俺の死ぬほど欲しかったものを、初めから手にしていた。無自覚にそれを振り回し、無自覚に俺に屈辱を与える。そう、いつだって無邪気に。そんなあいつから、命よりも大事なものを奪い取ってやりたい」 女は、顎を上げて、俺を見る。 「たとえここで私を犯しても、貴方は奪い取ったことにはなりません。あの人は、何があっても私を手放さないと言ってくれたもの」 いい目だ。揺るがない意志。それを突き崩してやるのもいい。 「じゃぁ、こんなのはどうです?」 静かに湧き上がり、満ちてくる、赤黒(あかぐろ)い得体の知れない感覚。 「俺はあいつとの関わりを断つ。パトロンにも手を引かせる。ギャラリーや雑誌社にも手を回す。あいつは自分で売り込みもした事がないんだ。その気になれば、粘土いじりしか能のないあの男を路頭に迷わせることくらい簡単なんだよ」 女の、苦悶の表情を見下ろして、俺は笑う。嘲笑(わら)ってやる。 「俺のものになれ」
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加