1/10
前へ
/122ページ
次へ

二十歳(はたち)か。娘と同じ歳だ」 男はそう言った。 じゃぁ、お父さんって呼びましょうか、と答えたら、やめてくれと真面目な顔で返された。 キスはダメ、と顔を背けたら、プロなのかと苦笑された。首に両手を回し、 ぎゅっ、ってして できる限りケナゲにそう囁いたら、大抵の男は私の願いを叶えてくれる。彼も力を込めて包み込んでくれた。私はなんだか暖かい気持になって、少しだけ泣きたくなって、もう、それだけで充 分幸せだ。本当は。 けれど、男という立場の生き物は、そうはいかないらしくて。セックスでは、女を喜ばせてナンボなのだそうで、指や舌を使って、いろんなことをしてくれた。 ごめんなさい。せっかくだけど、くすぐったいだけ。 「濡れてるね」 それはそうだ。正しい身体の反応だ。傷つきやすい部位が、保護のために防衛処置を取る。それだけのことだ。幸いなことに、私は分泌量が多いのだそうだ。そして、多いほど男は嬉しいのだそうだ。そういうものなのか、と思う。 私は、目をつぶって顔を背けた。彼はそれを羞恥と勘違いしたらしく、 「恥ずかしがるのは、スケベな証拠だ」 嬉しそうに、私の中に挿入れている指を、いっそうかき回した。痛い。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加