二章.父と子

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生まれた赤ん坊は母の死も知らずに無邪気に笑い、泣いた。 父は悲しみに暮れる暇もなくその赤ん坊へと一心に愛情を注いだ。 それは周囲から見れば異常な程の溺愛ぶりだったかもしれない。 けれど父は失った愛しい人の分までこの可愛い娘を愛さなければと思っていた。 さらに言えば生まれる事のなかった命、生まれてすぐに死んでしまった命の為にも、何としてでも... 赤ん坊はすくすくと育ち、いつしか小学校にも通い始めた。 父は生活のために忙しく働いていたがそれでもたった二人の家族の時間を大切にしようと必ず毎日少女との時間をとった。 学校であった事、仲良くなった友達の事、授業参観に来た父の事が友達の間で人気になっている事。 そんなたわいの無い話をした。
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