二章.父と子

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必死に身体を動かそうとしていると布団の衣擦れの音に気付いたのか父がゆっくりと顔を上げた。 寝惚けた表情は少女が知っているそれと全く変わらずほんの少しの安堵をもたらした。 そして次には父が驚いたように目を見開き、瞬く間に瞳から大粒の涙をこぼし少女の名前を大きな声で呼んでいた。 少女は父が自分に気付いてくれた事にひどく安心し、声が出ない事を必死に訴えようとした。 けれど父の声に駆けつけた看護師に二人は引き離され、少女はしばらく父に会うことは出来なかった。 きっとそれは数時間の事だったのだろうが少女からすれば父に会えないこの時間はとても苦痛だった。 医者や看護師が来て様々な事を確認したり処置をしていった。 初めは父に合わせて欲しいとしか言わなかったが、それが無駄だと分かったので大人しく彼らの好きにされる事にした。 これを我慢すれば父に会える。 そう思えば頑張れたのだ。
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