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3、開業
坂下夫妻の施術から4ヶ月が経った。マーダの転職相談所では今日も平和な時間が流れている。
「しかし、こっちの世界の飯もなかなか美味いのう」
ホイットニーは昼食のおかずであるイカフライとオニオンリングをつつきながらそう言った。最初は慣れなかったが、日本に飛ばされてから徐々に箸の使い方を覚え始めたようだ。
「お箸の使い方もいいですけど、敬語も早く覚えてくださいね」
セーファスはトゲのある口調でそう言った。
その時、相談所の扉が開く音がした。セーファスは急いで扉へと向かう。
「ようこそ。マーダの転職相談所へ」
と言うか言わぬかの間に、セーファスはあっという間に3匹のミニチュアダックスフントに囲まれた。
セーファスがしゃがみ込むと、3匹はそれぞれ前足をセーファスの脚にかけて、舌を出しながらつぶらな瞳でセーファスを見つめる。そして3匹の腰の部分にはそれぞれ1個ずつ直径15cmほどの車輪が装着されている。
「なんじゃ?可愛らしい犬じゃの」
ホイットニーはこげ茶色の犬に近づく。犬は一瞬だけホイットニーの方を向いたが、すぐにぷいっとそっぽを向いてしまった。
「なんじゃ?可愛くない犬じゃの」
「大長老。さっきと言っていることが真逆です!」
セーファスはすかさずホイットニーにツッコミを入れる。そしてその直後、視線を上に向けた。その先には坂下夫妻の姿があった。
「ああ、お久しぶりです!」
セーファスはにこやかに声を挙げる。
「その節はお世話になりました。今日は店が休業日なので、折角ですからクロ、アカ、そばめしと一緒にお礼を言いたいと思いまして。真紀、あれを」
秀昭がそう言うと、真紀はセーファスに菓子折を手渡した。セーファスは丁重に受け取り、給湯室へと持って行った。
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