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「そして、どうなのじゃ?その……犬用車いすの売り上げは?」
「はい。私が立ち上げたホームページでの反響が良くて、すでに今月2個売れています。そしてさらに5件の予約が入っています」
「そうか。良かったの」
「まあそれでも暫くは妻が営む犬カフェの経営も含めて火の車でしょうけどね。まあ何とか軌道に乗るまでは踏ん張ります」
ホイットニーの問いかけに秀昭は力強く答えた。
坂下夫妻が引き取ったミニチュアダックスフント、実は3匹とも重度の椎間板ヘルニアを患っていたのだ。秀昭は3ヶ月の間にその3匹をモデルとした犬用車いすの試作品を作成。そして改良を重ねていたのである。
ミニチュアダックスフントが椎間板ヘルニアを患う確率は他の犬種に比べ10倍にも上ると言われている。というのも、短い足で長い胴体を支えるという体の構造上どうしても背骨に負担がかかりやすいのだ。ましてや段差のある箇所に飛び乗ったりなどもするので、余計に負担はかかりやすい。その結果脊椎が圧迫されて神経に異常をきたし、歩調がおかしくなるなどの症状が現れる。重度になると、後脚が全く動かなくなって歩行が制限されたり、排泄が自在にできなくなったりするケースもあるのだ。
前職が自動車整備工であったこともあり、もともと機械や器具の整備は得意だった秀昭。秀昭の車いすの評判はネットの評判と口コミ双方から広がっている。
また、真紀はホイットニーの施術の甲斐あって、短期間の修行の中食品衛生責任者と動物管理責任者の資格を取り、犬カフェを開業した。普段はトイプードルなど4匹の犬が客を接待するが、スペシャルタイムと称してクロ、アカ、そばめしが車いす姿でお披露目になることもある。こちらも徐々に固定客がつきはじめている。
「よく、過去を乗り越えたの」
ホイットニーは秀昭に対し力強く言った。
「はい。ありがとうこざいました。過去と向き合うのは本当に苦しかったですが、やっと乗り越えられました」
秀昭は深く頭を下げる。
「本当は、ずっと犬を飼いたかったんじゃろ?」
秀昭はホイットニーの言葉に無言で頷いた。
そう。秀昭には過去、犬を飼えない、否、飼ってはいけない理由があったのだ。
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