1、後悔なき転職

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「坂下様、何点か質問がありますのじゃが」 「はい」 坂下は緊張した面持ちで答える。 「今、ペットは飼っておられるのかな?たとえば……犬とか」 「……いいや。飼ってないです」 坂下はそう答えた。坂下の眉間にほんの少しシワが寄った。 「なるほどの。では昔はどうじゃ?例えば、小さい頃や、学生の頃」 「…………はい。一応飼ってはいました」 重苦しい表情で坂下は答える。 「なるほどの。ちなみに坂下様の奥様は、ペットはお好きなのかな?」 「はい。妻は何度か犬を飼いたいと言っていたのですが、私が断り続けていたのです」 「なるほど。では飼わないのには、何か理由があったのですかな?」 「……いや、私が嫌だと申したので」 「それは、なぜですかな?」 ここまでホイットニーに問われたところで坂下は押し黙ってしまった。 「なるほど。まあよい。ちなみに坂下様の奥様との出会いはどこじゃったのですかな?」 「彼女、近所の喫茶店で勤めてて、可愛くて、てきぱきと動いていて、素敵だなぁと思って通いつめたんです」 「なるほどの。今、奥様は仕事は?」 「専業主婦なので、仕事はしていません」 「なるほど。すっぴんか……」 「え?すっぴん???化粧はしますよ?」 坂下が答えたところでセーファスが慌てて飛んで来た。 「大長老、こっちの世界では無職のことを『すっぴん』なんて言いませんよ。いい加減龍の星の常識を取っ払ってください」 セーファスが耳元で囁く。 「う、うむ……」 ホイットニーは一瞬ばつの悪そうな顔をしたが、気を取り直して質問を続ける、 「では最後に聞くが、坂下様、学校生活はどうでしたかな?楽しかったとか、そうでないとか」 「……あまり楽しいものでは……」 「それは、なぜかな?」 「……実は、いじめに遭ってました。中学の間、ずっと」 ホイットニーは暫しうつむいて考え込んだ後、坂下の顔を見つめた。 「おぬ……いや、坂下様、もしかして……」 「……はい。仰る通りです」
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