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最後の日。
あいにくの曇り空である。
しかし冬美はそんなこと全く気にしていない様子だ。
今年の誕生日に買ってもらったお気に入りのチェックのワンピースを着て、鏡の前でくるくると回っている。
早く行きたくてしょうがないのだろう。
「まりちゃん、まだ?」
「まだご飯食べてるから待ってて。」
日曜日だからか父も母もまだ寝ていてリビングには私と冬美の二人だけだった。
現在の時刻は七時三十分。私もいつもなら眠っている時間である。
「あ、まりちゃんの作ったケーキだ!早く食べたいなぁ。」
冬美は冷蔵庫を開けて勝手にケーキを取り出していた。
「落とさないで気を付けてよ。」
「大丈夫だよ。」
と冬美は私に笑ってウインクした。これは冬美の癖だ。
思えばお菓子作りを始めたのも冬美の喜ぶ顔が見たいからだった。
いつの間にか本格的なケーキまで作れるようになっていて、高校の時には文化祭のときに販売したケーキがきっかけで友達も沢山できた。
だから冬美にはとても感謝している。
私はケーキを箱に詰めながら色んなことを思っていた。
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