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いつここに入って来たのだろう。
今まで全く気配を感じなかったということは、この人が幽霊なのだろうか。
私は後退りしながら、スッと身構えた。
「大丈夫。何もしないよ。」
と優しい声がした。男の人は私を見てニコニコしている。
「え・・・?」
「こんにちは。驚かせてごめんね。そのクマの持ち主です。この屋敷の元住人でもある。楽しそうなパーティだったね。」
どうやらこの人は幽霊ではないようだ。
住人だというのは私の予想が当たっていた。
それに、この人の顔を私は何処かで見たことがあるような気がした。しかしなかなか思い出せない。男の人が羽織っている派手なオレンジのジャケットにも見覚えがあった。
その人はティディベアを抱きかかえ、庭が一望できる窓の方へ移動した。私もそれに付いて行く。
「ありがとう。久々に君たちのお蔭で屋敷の中が賑やかになったよ。今日は君一人?」
「冬美なら・・・っ。」
私は黙り込む。
「冬美ちゃんっていつも君と話していた子?屋敷の二階で何回も見かけたことがあるんだ。庭で楽しそうに自由研究やっていたよね。僕には姿が見えなかったけど・・・。」
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