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四日目の朝。
自転車に乗って今日もここへやってきた。
桜屋敷は相変わらず綺麗な花が沢山咲いている。
冬美は毎日、一種類ずつ花の写真を撮って記録を付けていた。
「まりちゃん。このお花かわいいよね?」
冬美は真っ白い花を指差して言った。見たことあるような気がするが、名前は知らない花だった。
「確かに。何て言うんだっけ・・・。」
「ガーベラだよ。あのね、実はこの花、押し花にしようと思うんだけど駄目かな?」
「押し花か・・・。少しくらい盗んでもきっと気付かれないから大丈夫だよ。」
「でも、毎年こんなに綺麗に花が咲くんだからお手入れしている人が居ると思うの。あ、そうだ!お手紙書こうかな!」
それはいかにも冬美らしい考えだった。
見知らぬ誰かに手紙を書くなんて、いくら考えても私には絶対に思い付かないだろう。
「それは良い考えかもね。それなら多分許してくれるよ。」
「うん!きっとここには私たちには見えない妖精たちが居るんだよ。ね?」
「そ、そうだね。」
冬美は手紙を書き始めていた。真剣な横顔が見える。
本当に妖精が居て、このお庭を管理しているのならかなり面白そうだ。
すっかり魔法の解けた私にはそんなもの信じるわけにはいかなかったが、可愛い妹のために付き合ってあげることにした。
冬美は書いた手紙を一番目立つ場所であろう切り株の上に置いた。私が持っていたレモン味の飴玉も添えて。
その日の帰り道の冬美はとてもご機嫌で歌をうたいながら自転車を走らせていた。
冬美の喜ぶ顔を見ていると私も同じように嬉しいのだ。
これは親バカならぬ妹バカなのだろうかと自分でも思ってしまった。
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