0人が本棚に入れています
本棚に追加
「い、いや。誰かのいたずらに決まってる。妖精なんてそんなものこの世には居ないんだから。」
怖くなって帰ろうとしていると、冬美に腕を掴まれ、
「信じたくない気持ちはわかるよ。でも、まりちゃん。その、確認してみないとわからないでしょ。中に入ったら本当に妖精が居るかもしれない。行ってみようよ!」
「危ないってば。」
「怖がりなまりちゃん。なら私一人で行ってくるから。」
妹は一度そうと決めたら曲げない子だった。
何を言っても無駄だと思い、私は仕方なく冬美は付いて行くことにした。
屋敷のドアはなぜか開いていて、冬美はさっさと入って行ってしまった。
これって不法侵入ではないかとか、知らない変な人が住み着いていたらどうしようかとか私の頭にはそんなことばかりが思い浮かぶ。
「冬美?冬美?」
ドアの前でノックをしながら名前を呼んでみるが、返事は無い。迷っていても仕方が無いと私は思い切ってドアを開けた。
「お、お邪魔します・・・。」
恐る恐る中へ進んでいくと、私は何かに躓き、転びそうになった。
薄暗くて何が落ちているのかよく見えない。
携帯のライト機能を使って光を当ててみると、そこには額縁が何枚か置いてあった。
絵は中に入ってないようだ。私はそれを隅にどかして、また冬美を捜し始めた。
屋敷だけあって中は広く、部屋も沢山あった。しんと静まり返っていて薄気味悪い。
昔流行ったゲームに出てきた幽霊屋敷によく似ている気がする。
私は怖くて今にも帰りたい気持ちだったが、冬美を見つけるために一つ一つの部屋を隈なく確認した。
それにしてもどの部屋も家具などは置いてないので殺風景にみえる。
最初のコメントを投稿しよう!