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「でも、今は幸せ」
だがこれに、辻上が小さく目を見開いた。
「本当か?」
うん。
未波は、大きな笑顔で頷いた。
「レイ、すごく優しいし、大好きなレイに、こんなに大事にしてもらって
すごく幸せ」
途端、ピッタリ動きを止めた辻上が、またじっと未波を見つめた。
「けど俺は……、お前が望むように優しく出来てない、だろ……」
小さく視線を落とした彼の頬を、未波は、そっと片手で包んだ。
「いいの。レイの優しさは、私だけが分かっていれば、それでいい」
未波。
呟いた彼が、短く吐息をつく。
「まったく、これ以上俺に惚れさせて、どうするつもりだ」
だが未波は、また小さくキスをしてニッコリ笑った。
「大丈夫。私のほうが、レイより惚れてるから」
しかし、それから始まった濃厚な夜の翌朝。
ちょっと予想はしていたが、やはり辻上の記憶から、この甘いひと時のことは完全に消えていた。
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