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今の様子から見れば、昨夜の言動が彼の本音ではないかと
薄っすら読み取れる。
それに、これ以上つっ込めば、彼が不機嫌になることは明白だ。
だが、酒と合格の喜びがもたらした偶然とはいえ、
せっかく見られた彼の甘い側面を、嫌な思い出にはしたくない。
それに、普段、慌てることの少ない辻上が明らかな動揺を見せたことに
彼も、昨夜の自分のした事の記憶は少なからず戻ったということで、
未波の中の何かが満足を得た。
まぁ、惚れてるとは言ってくれたけど、
私のほうがベタ惚れなのは、否定しようかないからね。
そんな自ら落ち着いた結論に、我ながらの苦笑が淡く浮かんでくる。
ところが、その未波の満足のお陰で解放されたはずの辻上が、
再び、珍しい顔を彼女に見せることになったのは、
翌週の金曜の夜のことだった。
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