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「えっ? あ、う……」
頷きかけた辻上が、なぜか言葉を呑み込んだ。
そして、焦った声で「悪い」と言う。
「逆に、そっちに行ってもいいか? その、コブが一つ付いてるんだが……」
うん。
未波の声が頷くと、電話の向こうの声が明らかに安堵の息と共に
「助かる」と呟き、間もなく切られた。
だが、なんとなくモヤモヤしたものが、未波の中には残っている。
たしかに今の未波に、辻上の女の影を疑う気持ちはない。
だがそれでも、子供との接点に乏しそうな彼が、
いきなり三歳児と一緒というのは、心中、穏やかならぬものがある。
しかも、今夜の自分とのデートのドタキャンの理由は、明らかにその子なはずだ。
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