15 ベイビーSOS

6/12
前へ
/37ページ
次へ
「えっ? あ、う……」 頷きかけた辻上が、なぜか言葉を呑み込んだ。 そして、焦った声で「悪い」と言う。 「逆に、そっちに行ってもいいか? その、コブが一つ付いてるんだが……」 うん。 未波の声が頷くと、電話の向こうの声が明らかに安堵の息と共に 「助かる」と呟き、間もなく切られた。 だが、なんとなくモヤモヤしたものが、未波の中には残っている。 たしかに今の未波に、辻上の女の影を疑う気持ちはない。 だがそれでも、子供との接点に乏しそうな彼が、 いきなり三歳児と一緒というのは、心中、穏やかならぬものがある。 しかも、今夜の自分とのデートのドタキャンの理由は、明らかにその子なはずだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加