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正直なところ、胸に浮かんだモヤモヤで、ちょっと辻上をからかえるかな
とも思っていた。
しかし、いざ玄関に現れた辻上を目に
未波の中に、にわかに渦巻いた毒気が矛先をかわされた。
甲高い呼び鈴を耳に廊下に出ると、もう扉を開けるまでもなく
その向こうの光景が目に映るような、激しい子供の泣き声が聞こえてくる。
そして扉を開けると、大泣きをする子供が
抱き上げている辻上の顔や頭を闇雲に引っ叩いていた。
当然ながら、未波はビックリした。
だがそのすぐ後に、思わず吹き出しそうになって、慌てて笑いを呑み込む。
そして突然現れた彼女の姿に、驚いたのだろう。
未波の目の前で、泣き暴れていた子供が、ピタッと泣き止んで振り返る。
だから、涙で頬を濡らし目を丸くする目の前の男の子に
未波は、ニッコリと笑いかけた。
「いらっしゃい。お腹空いたね。さあ、ご飯にしよう」
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