13 別れの曲 (つづき)

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それに、おずおずと顔を覆った手を口元にずらしてみると、 戸惑ったような面持ちの辻上が、こちらを向いて立っている。 その姿を目にした未波の中のいくつもの感情が絡まり合い、 涙が溢れ、もう押し留めきれない嗚咽が小さく漏れ出てきた。 戸惑う彼の空気に、怒りも拒絶も感じない。 むしろ、キザキザにひび割れた彼女自身の心にその空気が入り込み、 優しく痛みを溶かしていく。 レイ……。 口にしたい愛しい名前は、声にならない。 そんな滲んだ彼女の視界の中で、わずかに辻上の顔が辛そうに歪んだ。 そして、「未波」と再び呟いた彼が、こちらにゆっくりと歩きだす。 それから、もう一度「未波」と彼の低い声が呟いた途端、 未波は彼に駆け寄っていた。
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