帰還後、現実を探索する

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「壊れかけの、じゃなくて、壊れたラジオ」  淳さんは工具箱をひっぱりだしてきて、ラジオの中を開く。 「ずいぶん乱暴に扱っていたんだね。ここら辺をちょこっといじってみるとするか」  まるで手術をするかのように、本体を開き、器用にドライバーを使っていた。棚から単四電池を持ってきて、電池を入れてみる。硬くなった電源スイッチを押してみた。隣にあるチューニングのつまみを指先で回してみる。周波数が表示された下にある、赤い矢印が右から左にゆっくりと動く。 「こういうの得意だし。ハッチャン、ちょっと涙目になってるよ」  スピーカーからは、こもった声だが、かすかに男性の声がする。 「……J・MAXFMでは、ラジオ番組レポーターを募集しております。詳しくは当社ホームページをご覧いただくか、J・MAXFM総務部までお電話ください。電話番号は……」  息を吹き返したラジオから、お礼でも述べるかのように語りかけてくれる。忘れかけていたチャレンジ精神の芽が出たような気がした。 「どうした?」  淳さんはわたしの顔を不安そうにうかがっていた。 「ラジオの仕事、もう一度やろうかな」  ラジオと単語を吐いたとき、淳さんが言葉に反応してニコリと笑った。 「ようやくハッチャンの口からその言葉が出たか。もう、その声を出すのをあきらめたとばかり思ってた」 「ありがとう。やってみるよ、もう一度」  淳さんは黙って笑って頷いてくれた。
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