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学校の授業はもちろん、音楽会や発表会で先生に声が出ていないとよく怒られた。怒られることは慣れっこだった。
母親と商店街へ買い物にいったとき、お店のなかから透き通るようなきれいな声が天井のスピーカーから降ってきた。声の仕事につくひとがいると母親に教えてもらう。大きくはっきりとした声に憧れた。
両親に無理をいって通いはじめたある教室で発音練習で怒られた先生にも怒られた思い出はつい昨日のことのように思い返す。
次の日、履歴書を買いにいった。信号待ちをしているとき、ビニール傘が青やピンク、緑色に染まった。傘を少しだけ上にあげる。大きな家の角に、雨粒によって艶めいた紫陽花が咲き誇っている。淡い青やピンクが雨に負けないような色を主張していた。
応募書類を書き上げ、ポストに投函すると、携帯のアドレスにまだ残る電話番号を表示させ、通話ボタンを押した。
浜渕さんはもちろんだが、もともとスタート地点に導いてくれた人だった。
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