帰還後、現実を探索する

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 一階の事務所に顔を出し、中にいた一人の女性に声をかける。 「神宮寺ですが、白川先生はいらっしゃいますか」 「どうぞ、二階に白川先生がお見えです」  一礼して、事務所から、外階段を上る。ドアを開け、入ると右側に応接セット家具が置かれており、その奥が茶色の長机と椅子、ホワイトボードが置かれたアナウンススクールの教室がある。 「いらっしゃいませ」  入口に顔を向け、あふれんばかりの笑顔で迎えられた。だが、みるみるうちに険しい表情に変わっていった。 「白川先生」  奥の教室にいる赤いフレームのメガネをかけ、栗色のショートヘアのアシスタントらしき女性が血相を変えてこちらをのぞいている。 「こちらへどうぞ」 「失礼します」  入口に近い、あじさい先生ご自慢のイギリス王室風の椅子にぎこちない姿勢で座る。 「よくもまあ、平気な顔で来られたわね」  真っ黒の黒髪を肩までのばし、きつい表情を誇張させるかのように、赤の口紅を差していた。色白なので、真っ赤のスーツと赤いエナメルのハイヒールがよく似合う。向かい合わせに座ると、駅前にあるカルチャーセンターから事務所へ帰ってきたところだと教えてくれた。
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