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「ねえ。どんな気持ちか、わかる?」
「大学の休みを利用して、先生のスクールに通えたことは、とてもいい経験になりました」
「そうじゃなくって」
あじさい先生は語尾を強調し、声を荒げた。
「本当に申し訳ないと思っています」
「思ってる? 思ってるだけじゃ、すまされないことってあるでしょう。あたしのメンツ、丸つぶれじゃない」
あじさい先生の怒りに対して、わたしは何もいえなかった。
「そりゃあ、あんたはさ、こんな田舎の土地で司会業するよりは、都会でしゃべったほうがいいんでしょ」
ため息をつきながら、あじさい先生は続く。
「ノコノコ戻ってきて、ウチのスクールに頭下げにきたの? 相当ヒマ人なのね」
「わたし、J・MAXFMのラジオ番組レポーターに応募します」
「あら、そう。それはよかったわね。頑張ってね、っていってほしいの。バカじゃないの。もしかして、ウチに入り直して、仕事をオファーしてもらおうって魂胆なのかしら。またあのときと同じことの繰り返しじゃないの」
言い訳を述べる暇を与えてもらえず、あじさい先生はさらに付け加えた。
「ちゃっかり東京のラジオ局で浜渕さんと楽しく仕事したのよね。ちっぽけな仕事を押しのけて」
「ラジオの仕事ができたのは、先生の指導のおかげです。お礼を述べようと」
「せいぜいひとりでやることね。いってもらえるだけ、ありがたいと思ってほしいわね」
ぞろぞろとスクール生らしい人たちが入ってくる。
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