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「いらない。ほしくない」
「美羽ちゃんの欲しいもの、違っちゃったかな」
脇におもちゃの箱を置くと、美羽は白い裏のあるチラシとクレヨンを持ってきて結衣ちゃんと遊んだ絵を描き始めた。
「せっかく買ってくれたのよ。ちゃんとお礼言わなきゃだめでしょう」
母はオジサンの目の前で声を荒げた。どうしてお礼をいわなければならないのだろう。美羽は黙って絵を描き続ける。
「ごめんね、あとで言い聞かすから」
「いいんだよ。美羽ちゃん、遊んでね」
そういうと、髪の毛の少ないオジサンは困りながらも笑っていた。
何であんたはいつもそうなのと母はブツクサ言い、オジサンと共に外へ出ていった。次の日もその次の日も母は美羽や姉の前に顔を出さなかった。テーブルの上にはラップでくるまれた夕飯が置かれていた。誕生日ということでオムライスだった。薄く焼かれたたまご焼きをべたべたにケチャップで炒めたもので、べったりとラップについたケチャップをスプーンで取ってたまごにつけて食べた。ケチャップの味しかしなかった。姉は祝うことなく、すぐに食べ終わると美羽用に買っておいたアイスクリームを持ってきて一人で全部食べていた。
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