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ビジネスバッグから二枚の古びた写真を取り出す。美羽はそれを見て胸がざわめく。一枚は大きな家、もう一枚は小さな女の子が一人は網を持ち、一人は池をのぞきこんでいる写真だった。
「実家なのですが、母に送ろうと思いまして」
「……わかりました。納品前にまた連絡しますので」
また一件注文かい、景気がイイねと店の奥でおじさんとおばさんは新作のドールハウスを眺めながらつぶやいていた。
「完成しても、またお会いできませんか?」
五十嵐は美羽の驚く表情をみて、軽く照れ笑いをした。
「唐突ですよね。でもこの模型を見て、あなたに会った瞬間に、また会いたい気持ちが膨らみました」
「わたしでよければ、ぜひ」
期待にこたえられるような作品が仕上がるだろうか。
思い出があふれそうになりながらも、美羽は五十嵐のまっすぐな姿勢に過ぎ去りし日々をカタチに残したいと思った。
(了)
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