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追憶のレプリカ
緑色の草の上にかわいい小さな赤い屋根の家を描く。小さな白い犬がいて、周りには黄色の花が咲きほころぶ。
「いつまでやってるの」
集中はいつもここで途切れる。美羽はクレヨンで汚れた手で寝ころんでいた体を起こし、居間へ行く。
母は立てつけの悪い窓をこじ開けた。嫌な臭いが風とともに部屋の中に入る。小さな庭にはどくだみ草が一面生えていた。
「美羽、ちゃんと片づけておくのよ、それ」
母は広げっぱなしの紙とクレヨンを見つけて、目をつりあげる。ハアと、きつめの溜め息をつくと、こたつテーブルの上に乗った煙草に火をつけた。煙草の煙がまるで美羽に牙をむいているかのように上から降りかかった。
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