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「美羽ちゃんは何が欲しい? 誕生日プレゼント」
美羽の誕生日があと1カ月という6月のある日、母はごきげんな声で聞いてきた。
「小さなお人形とおうち」
笑顔で頷く母はベージュの受話機を持つと、ダイヤルをまわし、誰かに話しかけていた。
結衣ちゃんが玄関先で美羽の名前を呼んでいたので、扉を開けると、
「美羽ちゃん、ウチに遊びにきて」
と、靴をまだちゃんと履ききれずにいて脱げそうになりながら、結衣ちゃんにひっぱられながらおうちへ連れていかれた。同じアパートなので同じ間取りなのに家具できれいに仕切られていて、結衣ちゃんと結衣ちゃんの2歳上の姉の理衣ちゃんの場所には木のおうちのおもちゃがあった。
「買ってもらったんだ。一緒に遊ぼう」
木のおうちにはベッドやテーブル、イスなどの家具一色に、滑り台やブランコなどの遊具もあった。小指ほどの小さな人形をつまみ、動かしていく。美羽と結衣ちゃんはその住人になって滑り台やブランコで遊んだり、イスにすわったりベッドに横になったりした。
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