追憶のレプリカ

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「探検しよう」 と提案したのは結衣ちゃんだった。といっても、隣のおうちに行くことだった。小学校が夏休みになり、美羽はとくにでかけることもなかった。結衣ちゃんの家もお父さんのお盆休みが始まるまでは時間をもてあましていた。美羽たちの住むアパートの隣に大きな御屋敷があった。ちょうど御屋敷の裏庭には竹で作られた塀と扉があった。 「探検、探検」  そういって結衣ちゃんは竹の扉を開けて中に入る。ざぶざぶという水しぶきが聞こえる。お屋敷の裏庭に大きな池があり、赤や白などのコイがたくさん泳いでいた。  御屋敷にすむ青白い顔をした女の人が縁側に座っていた。母曰く、お金持ちの年上の男性と結婚して二階建の御屋敷に二人だけで住んでいる。  結衣ちゃんと美羽は女の人にあいさつして、石でつくられた橋を渡った。 「気をつけてね」 と穏やかな顔で美羽たちを見守っていてくれていた。 「今度、釣りしてみようか」 「どうやって捕まえるの?」 「虫とり網ですくってみる? 結衣、金魚すくい得意だから」 と美羽を残し、結衣ちゃんは自分の家へ行き、すぐに虫とり網を持ってきた。池の中に網を入れてもコイは泳いで岩のかげに隠れてしまった。
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