追憶のレプリカ

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「とれないね」 「そうだね」  パシャリという乾いた音がした。音をたどると、御屋敷の女の人がカメラを構えて微笑んでいた。 「写真とりたくなっちゃってね」 「おばちゃん、魂抜けちゃうって」  結衣ちゃんは口をへの字にまげていた。御屋敷の女の人は大きな声で笑った。 「ずっと残るものだからいいの」 「ずっと?」 「たとえいなくなったり、なくなっても、写真はいろんな思いを記憶してくれる」  そういうと、御屋敷の女の人は外に飛び出し、数回シャッターを切った。 「お嬢ちゃんたち、よかったらスイカ切ってあるから食べて」  御屋敷の女の人は縁側から奥にいき、カメラと引き換えに大皿に並べたスイカを用意してくれた。縁側に足を投げ出し、結衣ちゃんと池をのぞみながらスイカを口にした。きらきらとまぶしい太陽が池の水面を照らしていた。 「ごちそうさまでした」 「また遊びにおいでね」  御屋敷の女の人はにっこりと笑っていた。白い半そでのワンピースからのぞむ細く薄っぺらい体をみた。母のような血の気があるような雰囲気もなく、風に吹かれてしまったら飛んでいってしまいそうな体つきだった。母に家に帰ってから隣の御屋敷にいってスイカをごちそうしたことを告げる。 「あとで挨拶しておくから」  せわしなく煙草を吸い、力を込めて灰皿にこすりつける。たくさんある吸いがらが灰皿からこたつテーブルにはみ出していた。
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