追憶のレプリカ

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 母に念入りに体を洗ってもらい、上からお湯をかけてくれた。母もうれしそうにしている美羽を見て安心して仕事へ行った。 「ちょっと何やってんのよ、美羽」  夕飯を食べ終え、美羽が居間で寝転がりながらミニチュアの家を眺めていると、姉が怪訝な顔をして、美羽の足を蹴る。 「何それ、貸しな」 「やだ」 「貸しなよ」  姉の力に圧倒され、ミニチュアの家が奪われた。 「何このきったない家」  姉はミニチュアの家をみると、ぽいっとじゅうたんに放り投げた。 「何でこんなことするの」  美羽はそういって小さな目を吊り上げた。 「トロくさいんだから美羽は」  姉は美羽の頭を力任せにはたく。痛みよりもまずはミニチュアの家が壊れていないか心配した。少し角が丸くなっただけですんだ。  母が美羽と一緒に食べてねと勤めているお店の常連がパチンコの景品でもらったという板チョコを一人で全部食べていた。姉の後ろ姿は少しずつ横に広がっているのか、シャツの背中のプリントされた白いうさぎの絵が猫に見えた。
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