追憶のレプリカ

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 キンモクセイの花が咲く頃、学校から帰ると勉強机を兼ねている簡易テーブルにあったミニチュアの家はなくなっていた。 「お母さん、あれは?」 「捨てちゃったわよ。あんなゴミ」  そういいながら、せわしなくパフでおしろいをはたいていた。簡易テーブルの前に座って隅におかれた卓上カレンダーをみると、まんなか付近に大きな赤い丸がしてある。美羽が母の誕生日である23日に丸をつけたのだ。 「何をあげればいいかな」 「美羽ちゃんがつくるものなら、喜んでくれるんじゃないかな。上手につくってたし」  結衣ちゃんに相談し、御屋敷のおばさんにも相談してみた。二人とも同じような答えがかえってきた。チラシの白い裏面にマジックで『お母さん、誕生日おめでとう』と書いた。御屋敷のおばさんにもらった箱と結衣ちゃんと一緒に紙でつくった理想のおうちを完成させる。捨てられては困るので、今度は押入れの奥に隠しておいた。 「お母さん」  誕生日の母はいつものように能面のように顔を白く塗りたぐっていたところだった。いつもと違う赤い服をきていた。知らないオジサンからのプレゼントだと喜んで教えてくれた。押入れの奥をチェックし、捨てられていないことを安心して、 「これ」  美羽は母にお手製のミニチュア模型と特売情報の書かれた面を折ったチラシを差しだした。
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