追憶のレプリカ

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「だから捨てなさいっていってるでしょう」  美羽の両手にあるミニチュア模型をはたく。同時にチラシも下に落ち、チラシのほうを母が拾う。中を開けて美羽の文字を見ていた。 「お母さんの誕生日だから。だから」  ボロボロになったじゅうたんの上に転がったミニチュア模型を小さな手でかき集めた。母は目を丸くする。 「じゃあ、美羽がもらう」 「ごめん。ごめんね」  母は美羽を抱きしめた。母の足元には拾い忘れたお母さんをかたどった紙でつくったくしゃくしゃになった人形が転がっていた。  赤い服を汚さないようにしなくては、と思いながらも美羽の目には大粒の涙がこぼれていった。
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