追想のレプリカ

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「どうしても会いたいって」  友人から連絡があり、美羽は久々に生れ故郷に戻った。新しいドールハウスやミニチュア模型に交換するべく、美羽は飴色のドアを開け、友人のご両親にあいさつした。 「美羽ちゃん、お客さんなんだけど」  一人のスーツを着た青年が立っていた。美羽よりも若く、まっすぐ見据える瞳にどこか懐かしさを覚えた。 「わたくし、五十嵐忠信と申します」 「桐谷美羽です。はじめまして」  お互いに名刺を交換し、入口に近い席に向かい合うように座る。五十嵐さんの名刺は東京の住所が印字されていた。かつて美羽が住んでいた学生寮から歩いてすぐのところだった。 「この模型、いただけませんか?」  窓辺に飾られたミニチュア模型を指差した。二階建の大きな家の脇に、小さな一階建平屋アパート群が四つ立ち並び、その横には小さな川と川に沿うようにどくだみ草が植えられている。美羽がはじめてつくったものだった。
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