追想のレプリカ

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「納得というか、こういうおうちに住んでいたんだなって思いが伝わって、いいおうちだったんだな、と思いながらつくっているだけなんです」 「どれも温かみを感じるんですよ。他のひとがつくるものよりも」  五十嵐は力強い声で答え、席に戻った。ここまで褒めてくれる人はあまりいなかったので、美羽は恥ずかしくなってひざの上に置いた両手をぎゅっと握りしめた。 「うらやましかったからかもしれませんね。みんな、いいおうちに住んでいて」 「そんなことはないですよ」 「ウチに比べれば数段いいおうちですよ。こういうおうちに住んでいたらな、って思いながらつくっていました」  向かい合わせに座る五十嵐はゆっくりとカップを持ち、コーヒーを片手に美羽の目をしっかりと見つめていた。美羽が話し終わるのを見計らい、口をつけ、ゆっくりとコーヒーを飲む。何か思い出したようで、飲みかけのコーヒーカップを皿に戻した。 「母からこんな物語を聞かされました。昔、ミニチュアの模型をつくる少女がいました。すると完成した模型を置いてどこかへ消えてしまいました」  美羽は五十嵐から視線をはずし、窓辺に飾られた模型に目をやる。 「この模型にも物語があるんです」 「どんな?」 「むかしむかし、あるところに家族三人仲良く住んでいました。ある日を境にみんなバラバラになり、それを懐かしむように箱庭をつくるようになりましたとさ」  五十嵐と美羽はお互いに顔を見合わせて笑う。 「売ってもらえなければ、同じようにつくってもらうことは可能ですか?」 「同じものですね。大丈夫ですよ」 「では、つくってもらいたいんですけど、ちょっと待ってくださいね」
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