追憶のレプリカ

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「美羽ちゃんチはどこかにいかないの?」  ゴールデンウィークになり、道端で石けりをしながら、結衣ちゃんは屈託のない笑顔で美羽に質問した。 「どこかって?」 「ウチね、休みの日に旅行に行くんだ」 「そうなんだ」 「お土産買ってくるからね」 「ありがとう」  結衣ちゃんはその時何を着ていこうと相談されたけれど、美羽はどう答えていいのかわからなかった。家に帰って母がいつものスパンコールのついた黒の洋服に着替えているときに美羽は聞いてみた。 「お母さん、どこかいかないの?」 「どこって?」 「結衣ちゃんチは旅行に行くんだって」  母はしまりきらない背中のファスナーをうんうんとうなりながら上げていく。 「結衣ちゃんチは結衣ちゃんチ。ウチはウチなの」 「ねえ、何でウチは行かないの?」 「お金がないの。それに美紅が行きたくないだろうから」  母はどんな仕事をしているのだろう。結衣ちゃんがしきりに美羽に美羽のお母さんはどういう仕事をしているか聞きたがっていた。 「会社の御勤めに出ているっていうのよ」 「わかった」  いい子だね、と母は大きな手て美羽の頭をなでた。本当はお店にいってお客さんとお酒を飲んで仲良くしているみたいで、あの客はケチだと電話越しの誰かに向かって母が愚痴をこぼしているのをみていた。
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