追憶のレプリカ

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「お母さんは」 「……いません」  おばさんは勝手に玄関を開け、中に入る。キョロキョロと見渡している。 「おばさんがお昼、つくってあげる」  そういい、力まかせに冷蔵庫の扉をあけ、隅から隅までみていた。こたつテーブルにはすでに夕飯の親子丼が並べられていた。  おばさんは台所に立ち、トマトを切り、しょうゆをかけて近くにあったお皿に盛った。 「お母さん、何やってるひと?」 「御勤めにでています」  結衣ちゃんのお母さんは苦虫をつぶしたような顔をすると、おじゃましましたと家から出ていった。入れ替わるように姉が学校から帰ってきて、何でトマト食べてるのとキツく叱られた。  次の日、学校から帰って美羽はコーヒーを飲んでのんびりしている母に結衣ちゃんのお母さんが家に入ってきたことを報告した。 「なんで、結衣ちゃんのお母さんを家に入れたの」 「勝手に入ってきて……」 「しばらく結衣ちゃんと口聞いたらダメよ」  しばらくして、結衣ちゃんが玄関前に立ち、美羽ちゃん、遊ぼと声をかけてきた。まったくもう、と言葉をもらすと、母が玄関先に行き、結衣ちゃんに今日は遊べないよと告げると結衣ちゃんはどうしてなんだろうと首をかしげて自分の家へ戻っていった。美羽は玄関前のふすまのすきまから結衣ちゃんの残念そうな顔をみて、心が苦しくなった。
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