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一久が手を握って、私の顔をのぞき込んできた。
「話半分に聞いとけ。面白くしようと大げさに言ってるだけだからな」
洋二さんが、私たちの握った手を指さす。
「ちょっと、ちょっと、何、手を握っているんですか。イチャイチャしないで下さいよ」
「煩いな。お前が、しょうもないこと言うから、奈美が怖がってんだろ」
怖がってはいないけど。
人前だし、手も出来れば離して欲しいんだけど・・・・。しっかり握られた手は、離してくれそうにない。
「一久。一日、二日でも融通きかしてやってくれよ」
一久は、ため息をつく。
「なぁ、俺の顔たててくれ」
内田社長は、片手で拝む。
「うっちゃんの汚い顔たてたれよ、一久」
そう言いながら、岩田社長が、チラッと一久を見る。
一久は、もう一度ため息をつき困った表情を見せながらも。
「二日間くらいなら。後は、うちの中野と今村に行かせますよ。それで良ければ」
根負け。
内田社長の粘り勝ち。
「おう、二日で十分だ。一番大事な日だけ、顔を出してくれや」
内田社長は、ニカッと歯を見せて、笑った。
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