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私と雷花姉ぇは、彼女に協力の礼を言うと五時の家路を急いだ。
「本紫が話した、ピアノコンテストの話は嘘八百だ」
「なぜですの?」
いいか? と私は雷花姉ぇの肩にポンと手を乗せた。
「ピアノ奏者は、指が命だ。
にも関わらず、つき指のリスクを伴う、激しいスポーツを日常的にやるのは変だろう」
あっ、と雷花姉ぇが驚く。
「もう一つよろしいですか?
どうして生徒手帳が、盗まれたと分かりましたの?」
「写真のへこみ跡をよく見てみるんだ」
私はスカートのポケットに隠し持っていた、彼女の写真を慎重に広げた。
「胸元に着いていた、オリーブのワッペンと形がそっくりだろう。
つまりこの写真のへこみは、生徒手帳の本人写真を証明する、オリーブを模した割り印なのさ」
「割り印があるということは、生徒手帳の写真を使った動かぬ証拠ですのね」
「おそらく犯人が、彼女を突き飛ばした際にスリ取ったのだろう」
「と言うことは」
「ああ、本紫こそが、連続窃盗事件の犯人だ。
いかにも不審者というイメージの黒いニット帽を被っていれば、長髪だって容易に隠すことができる。
路地で怪しく印象付けた帽子とジャンパーを脱ぎ、いかにも女性らしい長髪に戻ればまず疑われないだろう」
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