第八席 日用品連続盗難事件

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 私と雷花姉ぇは、彼女に協力の礼を言うと五時の家路を急いだ。 「本紫が話した、ピアノコンテストの話は嘘八百だ」 「なぜですの?」  いいか? と私は雷花姉ぇの肩にポンと手を乗せた。 「ピアノ奏者は、指が命だ。  にも関わらず、つき指のリスクを伴う、激しいスポーツを日常的にやるのは変だろう」  あっ、と雷花姉ぇが驚く。 「もう一つよろしいですか?   どうして生徒手帳が、盗まれたと分かりましたの?」 「写真のへこみ跡をよく見てみるんだ」  私はスカートのポケットに隠し持っていた、彼女の写真を慎重に広げた。 「胸元に着いていた、オリーブのワッペンと形がそっくりだろう。  つまりこの写真のへこみは、生徒手帳の本人写真を証明する、オリーブを模した割り印なのさ」 「割り印があるということは、生徒手帳の写真を使った動かぬ証拠ですのね」 「おそらく犯人が、彼女を突き飛ばした際にスリ取ったのだろう」 「と言うことは」 「ああ、本紫こそが、連続窃盗事件の犯人だ。  いかにも不審者というイメージの黒いニット帽を被っていれば、長髪だって容易に隠すことができる。  路地で怪しく印象付けた帽子とジャンパーを脱ぎ、いかにも女性らしい長髪に戻ればまず疑われないだろう」
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