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床一面には、ビニール袋に入れられた15センチ四方の色とりどりの布切れがあった。
一つ一つに四角く切り取った、画用紙が封入されている。
律儀なことに、日付と時間も記入されていた。
持ち主と思われる、小学生のぼかした顔写真まで添付されていた。
袋の上から付箋でIDらしき英数字や、住所が書かれている袋もある。
オークションにでも、出品するつもりなのか?
暗闇に目が慣れてきた私は、ようやくそれがハンカチだと理解した。
高校生の彼女は、小学生が地面に財布と同時にハンカチを落としていたと言った。
小学生ならスカートに、ハンカチを持ち運ぶよう教育される。
もし窃盗犯の本当の狙いが、ハンカチだとしたら。
一見貴重品である財布や家の鍵が、手つかずで捨てられていた理由。
文房具やお菓子など、金銭的価値の無い物が盗まれていた理由も分かる。
窃盗犯はハンカチを求めて、スカートのポケットのみを手当たり次第に盗んでいたからだ。
転売目当てで、利益を得るために。
子どもの親は、娘がハンカチを失くしてきた所で、まさか盗まれたとは考えない。
大して高価でもないので、すぐに次の日から新しいハンカチを持っていかせるだろう。
女子小学生から盗まれたハンカチは、利益を生むのだ。
いや、あるいは本人の趣味も兼ねているのかもしれない。
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